![]() (作品1) ![]() 近藤ナオ氏(以下「近」):上根さんのポートフォリオを開いた瞬間、どんどんページをめくりたくなって、「作品の根っこが全部同じなんだ」ということを理解していくうちに、この中に描かれた世界に気づかされた。ポートフォリオの中でその一連の行動が起こったんですよ。今回のポートフォリオ審査の中で、僕自身を揺さぶった唯一の人かもしれない。 上根拓馬氏(以下「上」):ありがとうございます。 近:ポートフォリオの中に書かれていた「曖昧な分類」という言葉が全てを表している気がします。上根さんのドローイング(作品1)は、生物の骨格のシルエットをシンプルに描いたものですが、骨格そのものは中央部分が隠れていてつながっていない。そうすると何の動物だか全く分からなくなりますね。そのドローイングがひたすら続く。あらゆる生物が同じように描かれている。その連作を見てゆくと、人間が勝手に生物を分類していたのだと気付く。「分類」という先入観を外すと、そこには同じ根源的な要素が存在していることにまた気付いて、揺さぶられる。そんな一連の行動だったのだと思います。上:分かって頂いていて嬉しいです。パーツをばらして組み合わせたカタチを集合させて、無限大になる動物を作りたかったんですよね。 近:もともとは、どんな思いからこの作品群がスタートしたんですか? 上:生命体が死んだときに出るエネルギーみたいなものからスタートしました。科学的に言えば電気信号とかが通っているわけでして、そういうのを具現化した物を自分で作ってみたかったので。エネルギー波みたいなものですね。いろんな動きをして躍動しているって感じを描き出したつもりです。 近:そう言われると、根底に流れている要素が見えて来ますね。上根さんの作品は、ぱっと見でニュアンスが分かって、気づくこともできるけど、ちゃんと読み解こうとすると訳が分からなくなってくるっていう。そこが、僕の中でぐっと来たところでもあります。対象をバラして抽象化する作品を作るに至ったコンセプトをもっと詳しく聞きたいですね。 上:生命1体1体をデータ収集していくと、命というものを誕生・進化させてきた地球の意志に触れることができるのではないだろうか、そんなことを考えています。 近:自分の中にある好奇心の満足を一番に考えながら物作りをしていることに、個人的にとても好感を持ちます。 上:作って気持ちのいいものでないと人に見せる気がしない、気持ち悪い物は自分の中で消去してしまうので。かといって、制作して得た充実感がずっと持続する訳ではないんですよ。作って半年も経ってくると、あらが見えてくる。そうなってくるともう、違う欲求の方に行く、で、エンドレスでカタチが作られていく。近:なるほど。 ところで、上根さんは子どもの頃どんな子だったんですか?作品を見ていてすごく興味が湧きました。ちょっと普通じゃなさそう(笑) 上:自分自身は普通に過ごしてきたと思うんですけど、人から見れば変だったかもしれませんね。小学校の頃は個人的にひたすら好きなものを作っていました。親が学校の教師でいろんな物を持ってきてくれるんですよ。教材なり紙なり。家に大量に素材だけがあって、そんな中で、まあおもちゃとか買ってくれなかったんで、興味があるものに関しては自分で作らなきゃいけなかったんです。 あと収集癖。その当時、「ゲゲゲの鬼太郎」をずっと読まされてて、ていうか親が漫画はずっとそれしか買ってくれなかったんですよ。おかげでそっち系の絵が自分の中にインプットされちゃって、ああいう世界観のものを自分でも作って。かわいいキャラではない、少し陰のある絵に惹かれてていたんです。そういう絵をわら半紙に描いてましたね。 近:読書は好きでしたか? 上:読書もしてましたけど、こういう作品をつくる僕のルーツは、やっぱり収集なんですよね。博物館が好きだったので、そこに陳列されている動物、物体にかなり興味があって、それを自分なりにカタチを作ってみたらどうなるんだろうって。いろいろ調べていくうちに、それこそ情報は無限大に入ってくるので、それを一個一個自分の中に取り込んでいきながら、作品を作ってみたら面白いかなと。今、資料集めてるもの、なんとなくコンプリートしてみたい、という欲求があって。 近:なるほど。 上:集めてる時は気持ちいいですよ。発見した喜びと、カタチにしたときの喜びとは違うんですけど。作り終えた時の充実感は、ことばでは言いにくいですね。 近:その喜びの瞬間は、外に向いている感じですか?それとも内側? 上:完全に内側ですね。発表するときは外側に向きますけど。やっぱりカタチにしたら人には見てもらいたくはなりますね。その欲求がどこから発しているのかは分からないですけど。 近:生物をモチーフにすることに至ったきかっけっていうのは何ですか?上:環境によるところが大きいですね。今住んでる場所がかなり大自然って感じなので。日常に生物が沢山いて、収集癖に火がついちゃった。徹底的に調べていってどんな物たちなのかは知りたくはなりますね。 近:そういうときってどうやって調べるのですか? 上:図書館にはよく行きますね。そこから、変な生き物たちを色々発見するのが好きでした。そしてあるとき、自分の興味が生物の内部に入りこんでしまって、骨はどうなっているのか知りたくなった。骨格を調べだしたら生物の骨のカタチってきれいだな、と思って。 さらに内部に入ると細胞単位になります。細胞のカタチって同じだから、そこから幾何学形態ってきれいだな、面白いなってまた気付く。それらが合体したらどうなるだろうってとこから作ってみたりします。 近:もっと研究した上で表現していくって領域に入ってくと、面白いですね。上根さんの作品からは、一瞬の解釈で作った物ではない、積み重ねたものの強さを感じます。今の話を聞いて、よりその思いが強くなりました。上根さんの作品を選んだ理由に、簡単に描いて描ける線じゃなかったっていうのもあります。骨格の書き方なんかのディティールに研究者っぽい側面を感じたんですよね。 上:資料は完全にそっち(研究者側)ですね。カタチを構築して行く上で、リアリティを持たせたかったんですよ。資料を集めれば集めるほど、僕のなかで新しいカタチが生まれてくるんです。そこは徹底的にやらなければ。 近:この作品が持っている強さはそこにありますよ、全部。 ![]() *インタビューは近藤さんのオフィス(asobot)をお借りして行いました。 __________________________ profile 上根拓馬 Takuma Kamine 1978大阪府生まれ。2002年東京造形大学美術学科卒業 「開けゴマ!vol.2美術誕生」準大賞受賞 「Abflug 2002」、「DANKE OSAKA 」、 「東京ワンダーウォール公募2002」、「TAKO KITE」、 「MINI MINI MOTOR SHOW」、 「現代美術—茨木展」、「美術誕生受賞者新作4人展」、 「JEANS SHOP GINZA」、「TOKAY GECKO AWARD 2006」など、 個展・グループ展で積極的に作品発表を行っている。 近藤ナオ Nao Kondo ASOBOTクリエイティブディレクター 2001年にクリエイティブの企画・コンサルティング会社 「有限会社ASOBOT」を起し、シブヤ大学の設立を始め、 Levi'sの店舗プロデュースや東欧雑貨、 欧州アンティークの家具の買い付け、 タブロイド誌「GENERATION TIMES」の編集にも関わり、 建築、雑誌、ファッション、広告などの幅広い分野で クリエイティブディレクターとして活躍中。 GENERATION TIMES 編集ディレクター シブヤ大学(SHIBUYA UNIVERSITY)ディレクター FOUND ディレクター Heaka AVEDA ディレクター nano associates 商業開発コンサルタント
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